読む速度
ふと本屋で「鹿の王」を見つけたら止まらなくなってしまった。いつものことながら, 月曜に読み始めて火曜日には文庫になっている1, 2巻を読み終わってしまい, 3, 4巻の発売を待ちきれず, 別のシリーズまで買ってしまった。
そしてたった今, 「獣の奏者」を番外編の短編集含め全て読み終わったところだ。
読み始めたのは昨日の朝。読んだ本の数5冊。所要時間10時間といったところだろうか。
上橋 菜穂子氏の小説のようなが読んでも楽しいファンタジーというのは, 小中高校生のころ散々読み散らかしてきたわけで, 夜通し「ハリーポッター」に熱中し, 「指輪物語」をなんとか読み通して, 富士見ファンタジア文庫やら電撃文庫に耽溺していたころと大して変わらず成長もしていない。
大人になってからは, お金がもったいないからなるべく近寄らないようにしていたが, 疲れるとやっぱりタガが外れてしまう。
私が本を隣で映画を見ていた恋人は, 私があまりの速さで本を消費していくことに驚いていた。「これまで本は耐久消費財だと思っていたんだけれど, 消費財だったんだね」と彼は言った。彼曰く, 文庫本なら読み終わるのに2週間から1ヶ月かかるらしい。
だから私は, 最近本を英語で読んでいるのだ。英語で読めば, 2時間で読み終わる小説が3ヶ月かかる。その分時間が保つからお金を節約できるというわけだ。
その読む速度の差に母語と異国後との差, 私の語学能力のなさをひしひしと感じざるをえない。
少女時代から, さして成長していないとはいえ, 最近小説を読みながら, 今までと違うことに気がついた。昔は, 物語はただそこにあるもので, いやむしろ神から遣わされた存在のように作者の息遣いを感じることがなかったが, 最近なんとなく, この本がどのようなプロセスで書き上げられたものなのか想像ができるようになった。
手元にどんな資料が置いてあるか, どんな人にヒアリングを行ったか, 元になっている伝承, 書くときのペースなんかがなんとなくわかるようになった。そのあとの, 校正や本に仕立てるプロセスも知識として知っているから, フローが浮かぶ。
それはもちろん, 私にもできるというわけではない。
複数の人間が関わる事業として, 書籍が見えるようになったというだけのこと。
最近は, 物語の裏にある, 人の活動を想像することも楽しいと感じるのだ。